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全部、

初出:2007/4/22
競作お題「耳に、触れる」Ver2
ありがちな絶望。

ただの、夜の戯言。


嘘だ。
何度目か繰り返した呟きをまた繰り返す。
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ。
そんな馬鹿なことがおこりえるはずがない。何度も何度も、自分に言い聞かせてきつくきつく右手を握り締めた。手のひらに収まっていた細身のグラスには、とっくにヒビが入っている。

ピシリ。

辞めなさいよと。
痛いだろうと囁かれた声に向かって、痛いに決まっているじゃないかと叫び返したかった。けれど、声が喉に張り付いてしまう・・・枯れ果てた喉に。
言葉さえもひび割れて。

ピシリ。

砕けてしまえばいいのに、世界ごと。耳に触れる痛みに、響きあう鼓動。
息すらままならない、生きることは、こんなに辛かっただろうか、こんな、こんな風に、乾き果てていただろうか?
手のひらからガラスが消える。
不思議だ、砕けた音は、聞こえないんだな。

嘘だ。

また繰り返した。馬鹿の一つ覚えのように。
愚かにも滑稽にも浅はかにも、馬鹿らしくも。目の前に突きつけられて直、現実など遠い世界の出来事のようで。
嘘、嘘、嘘。
嘘ばっかりだ、世界なんて本当に。


嘘。

だったら。

・・・・どんなに。



目の前に無言で横たわる白い手に、さようならを言えと人が囁く。
嫌だ、と拒否する代わりに、その手のひらを握り締め、脳裏に刻みこむようにゆっくりとなぞった。
何で君はこんなになってまで優しくて。
何で君はこんなになってまで柔らかくて。
何で君は、何で君はこんな瞬間ですらも。



愛しいんだろう。



嘘だ。
呆けたようにもう一度繰り返した。
奇跡なんて起きないって知っていたのに、それを信じた。
全部、夜のまどろみ。

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