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さよなら、ありがと。

初出:2007/5/14
自己犠牲と他愛ない恋。

ごめんね、先に謝っておく。
きっと君が怒るような自己犠牲を、決断しようと思う。

笑っていることが辛いなあなんて、思ったのは君に出会ってからだった。嬉しいとき楽しいとき笑顔になるなんて当たり前の方程式を、それでも絶対じゃないよなあと苦笑しながら、君の隣を歩いていた。
君にとっての当たり前のものは、何一つ僕の当たり前じゃなくって、そんなすれ違う思考回路が好きだった。
くるくると表情が変わるから、見ていることが楽しくて、だから意地悪も言ったし素直にもなれた。言葉一つで、君を動かせることがただただ嬉しかった。
しんどいときは、何も言わないで傍にいてくれた。悲しいときは、抱き寄せて頭をなでてくれる優しい指が好きだった。制御しきれないほど怒りがこみ上げたときは、本気で怒り返してくれる君のまっすぐなところに焦がれてた。
転んでも手を貸そうとしている間に自力で起き上がっている、芯の強さに見とれてた。そうして転んだところを見られちゃったと苦笑する、全部隠したがる笑顔に腹が立った。
頼ってほしいときに限って誰の方も借りないその生き方が、嫌いだった。けれど頼りたいとき自然と手を差し出してくるそのスマートさが、腹立たしいほど嬉しかった。
僕にとっての君というのは、神様みたいなものだったんだ。
だから分かってくれなんていわないけれど、一応それなりの理解を示してくれるとありがたい。僕の世界は君に支えられて存在したから、君を失えば僕もなくなっちゃうんだってことを、納得はできなくてもそういうもんなんだって思ってくれたら嬉しい。

ごめんね、繰り返し謝っておく。
君が嫌う道を僕は行くだろう。

思えば僕がこれほどまで君に傾倒していたなんて、君は全く知らないだろう。一応ポーカーフェイスと呼ばれる僕の、最後の見栄がそれだ。意地なんか張ったってろくなことにならないって知っているけど、それでも貼りたいんだから仕方ないだろう?
好きな人には嘘ついてでも良く見られたいっていう、あれだ。あの感覚は痛いほど良くわかる。
だって仕方ないだろう、取り立てて君の記憶に食い込むことのできなかった僕が、せめてできることといったら綺麗な思い出になることくらいじゃないか。それさえダメだといわれたら、僕は全く空気になるしか術がない。余りにも空しいじゃないか。
いつか君の一番に、なんてのは。
叶わぬ夢だったけど。

ごめんね、ホントにこれが最後。
君の事が好きでした。

全部、全部過去形にしちゃわないといけないことが、こんなに泣けるなんて思わなかったよ。
きれいごとに命はれるほど、愚かな自分に乾杯だ。君が大ばか者、ってののしる姿すら想像できて、それはちょっと楽しい。多少、爪あとくらいは、君の心に残るだろうか?
許してよ、幸せなんだ。
君のためにって泣けることが、今酷く。
馬鹿だけどさ・・・幸せなんだ、バイバイ。

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