暁を待つ庭/短編保管庫
別ブログにて書き散らした短編まとめ。
激しく気まぐれ更新。
サーカス
初出:2005/11/09
サーカスのイメージ。
サーカスのイメージ。
小さな歌を、雑踏の中で君はいつも歌っていた。
ヒュルリラ、ヒュルルラ。さあさ、よってらっしゃいな。
カーチェスタ一座のお通りだ、年に一度の公演がはじまるよ。
陽気なクラウンが花をあげよう。玉乗りに興味がないなら虎はいかがかな?おおっと!腰を抜かしたらいけないよ、まだまだ序の口さ。
妖精みたいな女の子は笛が得意、リズムに合わせてアクロバットショーが見ものだよ。
少年は盲目だけど耳がいいんだ、十人の言うことを同時に聞いて、それぞれがなんといったかあててあげるよ。
誰か!ナイフ投げの的になってみないかい?・・・おやおや、立候補者はいないようだねえ。
それじゃあ誰か!ここなる老婆の特技を当ててみないかね?・・・そこの坊やどうぞ!早口言葉?違う違う、もっとすごいさ!・・・そちらのお嬢さん!・・・正解だ!彼女は凄腕の手品師、今宵は魔法を見せるよ!
ヒュルリラ、ヒュルララ。
お父さんお母さんお嬢さんお坊ちゃん、おばあさんもおじいさんも、よってらっしゃいみてらっしゃい。
カーチェスタ一座は夢の夜をお約束しましょうぞ。
さあさ、みなさんお誘いあわせておいでなさいな、興奮のひと時を、魔法のひと時を。
カーチェスタ一座のお通りだよ!
きらびやかなネオンの町を練り歩く一団は、街角に立って口上を述べ、少し街頭でショーを行いながら、はずれの広場へとたどり着く。
そこは毎年毎年、その一座がサーカステントを張る所定の位置となっていた。
めいめいが荷物を運び、男たちが主体となってテントを張る間に、女たちが食事の用意をしながら雑談を交わす。今度の町はどうだろうね、前のとこよりゃ活気があるといいが、公演に間に合うかね、大丈夫だろうさ、さあ野菜を取っておくれ。子供たちは皿を用意だ。
ああ、サツキ。
サツキはいいよ。お前はここにおいで。目が見えないんだから、割れ物に触っちゃいかん。
ぼろぼろのつなぎを着た少年が、引き止められていすに座った。
それを確認して、女たちの雑談は続く。
サツキといえば、よくお前私たちにはぐれないでちゃーんとついてこれるねえ。あんた耳がいいから、それのおかげかね?いやいや、誰も手を引きゃしないだろう?自分の出し物で手いっぱいだもんねえ。
ええ?歌が聞こえるって?
そ うかいそうかい、きっと若いもんのだれかが歌ってるんだねえ、それを聞いてついてくるのかい?あんた耳がよくってよかったじゃないか、それで一芸できるん だし、食いっぱぐれもないしね。ああでも、うちにずっといるっていうんなら、ほかの芸もぼちぼち覚えないといかんよ。そのうちピエロのパントマイムでも習 うといいさ。
ああ。パントマイムといえばあの口の聞けない女の子は名前なんていったかねえ、すーぐわすれっちまう。・・・まちなよ、それはこっちだ、そのなべにはこの肉を入れるんだよ。わかってないねえ・・・。
ばたばたとせわしなく動く女の横で、サツキが小さくつぶやいた。
マイだよ。あの子の声、僕は聞こえるよ。歌ってるよ、あの子は。
あの子、ずっと歌ってるんだよ。
雑踏の中でいつでも少女は歌っている。その声を、少年は聞く。
ヒュルリラ、ヒュルルラ。さあさ、よってらっしゃいな。
カーチェスタ一座のお通りだ、年に一度の公演がはじまるよ。
陽気なクラウンが花をあげよう。玉乗りに興味がないなら虎はいかがかな?おおっと!腰を抜かしたらいけないよ、まだまだ序の口さ。
妖精みたいな女の子は笛が得意、リズムに合わせてアクロバットショーが見ものだよ。
少年は盲目だけど耳がいいんだ、十人の言うことを同時に聞いて、それぞれがなんといったかあててあげるよ。
誰か!ナイフ投げの的になってみないかい?・・・おやおや、立候補者はいないようだねえ。
それじゃあ誰か!ここなる老婆の特技を当ててみないかね?・・・そこの坊やどうぞ!早口言葉?違う違う、もっとすごいさ!・・・そちらのお嬢さん!・・・正解だ!彼女は凄腕の手品師、今宵は魔法を見せるよ!
ヒュルリラ、ヒュルララ。
お父さんお母さんお嬢さんお坊ちゃん、おばあさんもおじいさんも、よってらっしゃいみてらっしゃい。
カーチェスタ一座は夢の夜をお約束しましょうぞ。
さあさ、みなさんお誘いあわせておいでなさいな、興奮のひと時を、魔法のひと時を。
カーチェスタ一座のお通りだよ!
きらびやかなネオンの町を練り歩く一団は、街角に立って口上を述べ、少し街頭でショーを行いながら、はずれの広場へとたどり着く。
そこは毎年毎年、その一座がサーカステントを張る所定の位置となっていた。
めいめいが荷物を運び、男たちが主体となってテントを張る間に、女たちが食事の用意をしながら雑談を交わす。今度の町はどうだろうね、前のとこよりゃ活気があるといいが、公演に間に合うかね、大丈夫だろうさ、さあ野菜を取っておくれ。子供たちは皿を用意だ。
ああ、サツキ。
サツキはいいよ。お前はここにおいで。目が見えないんだから、割れ物に触っちゃいかん。
ぼろぼろのつなぎを着た少年が、引き止められていすに座った。
それを確認して、女たちの雑談は続く。
サツキといえば、よくお前私たちにはぐれないでちゃーんとついてこれるねえ。あんた耳がいいから、それのおかげかね?いやいや、誰も手を引きゃしないだろう?自分の出し物で手いっぱいだもんねえ。
ええ?歌が聞こえるって?
そ うかいそうかい、きっと若いもんのだれかが歌ってるんだねえ、それを聞いてついてくるのかい?あんた耳がよくってよかったじゃないか、それで一芸できるん だし、食いっぱぐれもないしね。ああでも、うちにずっといるっていうんなら、ほかの芸もぼちぼち覚えないといかんよ。そのうちピエロのパントマイムでも習 うといいさ。
ああ。パントマイムといえばあの口の聞けない女の子は名前なんていったかねえ、すーぐわすれっちまう。・・・まちなよ、それはこっちだ、そのなべにはこの肉を入れるんだよ。わかってないねえ・・・。
ばたばたとせわしなく動く女の横で、サツキが小さくつぶやいた。
マイだよ。あの子の声、僕は聞こえるよ。歌ってるよ、あの子は。
あの子、ずっと歌ってるんだよ。
雑踏の中でいつでも少女は歌っている。その声を、少年は聞く。
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