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小宇宙

初出:2005/11/04
描かれる世界。

「魂もってかれそう」

つぶやいた君の言葉に笑う。

「同じこと考えてた」

つぶやいた僕の言葉に、君も笑う。
開館直後の美術館なら、話題の絵画展だってきっとすいているはずだ、と君が言い出したのは昨日の夜だった。
君は決して認めないけれど、この有名な画家の代表作がすきだってことを、僕は知っている。だから検証するという君の言葉には、黙って乗ることにした。
美術館という空間は、異世界だけれど。
この異世界の空気が、気持ち悪いのと気持ちいいのの奇妙に混ざり合ったような、妙に懐かしい気分にしてくれる。
僕はその、浮遊感がたまらなく、気に入っている。

「こんなの、描いたやつはおかしい」

君は神妙に言う。

「こんなすごいの、なんで描けるんだ。馬鹿じゃないの」

ほめてるんだかけなしているんだか、という内容だけれども、確実に褒めている。
目がきらきらと輝いているその横顔に、僕は黙ったまま苦笑した。
わかりやすい天邪鬼は、ほほえましい。

「神の狂気・・・というんだそうだよ」

「狂気?」

「そう。あまりに美しすぎる美術品を、古代人はそう呼んだらしい」

まともじゃないと。
美しすぎるのは、普通じゃないと。
それはとても悲しいけれど。

「狂ってなきゃ描けなんだね」

絵を見る君の目は、変わりなく美しく。
それでいいんだというようだ。

狂気でも、いいんだと。

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