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無慈悲にして寛容なる春へ

初出:2007/3/16
某方の夢の話からイメージ。

「夢を・・・見ていました」

春めく空が、霞がかったような白っぽい青で、風に吹かれている。ぽかりと注ぐ日差しのまぶしさに目を細めて、男は、誰にでもなくただ自分のために、つぶやいた。

「夢・・・を」

焼ける夢だった、凍える夢だった。
ただただ、世界には滅亡と崩壊しかなく、渦巻く熱風の中に一人、いっそ殺してくれとかすれた声を張り上げながら泣いていた。
焦げ付く夢だった、凍てつく夢だった。
死神に嫌われた手足が人形みたいに突っ立ったまま、命を抱えて一人、絶望の海を泳いでいた。足に絡みつく幾千の手のひらが、なぜ生きているのだと問う。泣きながら、もがきながら、そんなもの知るかと繰り返す。
知らない、知らない。
なぜ死神は来ない?
今一番世界で、死を欲しているのは自分だというのに。

「夢・・・なのに、どうして、でしょうね」

春の日差しが暖かいのは。
涙を乾かす為なのです。と。
崩れるように笑ったあなたの微笑みが、心をじりりと締め付ける。

「 くるしいんです 」

苦い夢、痛い夢。こげる魂、焦げ付く記憶。
精神が侵食され、意識は殺され、世界は崩れ落ち、手足は人形のまま。何度叫んだだろう、何度声にならなかったろう、数えるまでもなく、それらはイコールだろうけれど。
それでも。
守りたい存在が守れる範疇にないあの絶望と嘆きほど。
乾く、ものは。

「夢・・・」

頬をすべる涙を。
どうか、春の日差し。乾かしてなくしてなかったことに。
どうか。
愚かな祈りでも。




「夢なら、よかったのに」

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