暁を待つ庭/短編保管庫
別ブログにて書き散らした短編まとめ。
激しく気まぐれ更新。
南へ
初出:2007/3/26
なんで戦場とか好きなんだろう、と時々考える。
なんで戦場とか好きなんだろう、と時々考える。
悲鳴じゃない嘆きじゃない祈りじゃない。
これは、ただの。
戦う覚悟などなかった。
人を殺すなんて冗談じゃないと。
ましてや人に殺されかけるなど。
死にたくないし、殺したくもない。
恐怖に足だってすくんだ。
勇敢に立ち向かえ、なんて台詞は、戦場にいないから吐けるのだ。
殺せ、と人が叫ぶ。
殺せ、と空気が。大地が。空が吼えた。
すくんだ心にふたをして、人形みたいに心をつぶして。
ただ、ただ、目の前のものだけを。
ひたすらに切り捨てる、だだそれだけの地獄。
そして・・・その地獄にも、君はいた。
それがすべて。
それが、奇跡。
ズタボロになって転がった、布切れみたいな命が二つ。互いの胸に手を置いて、互いの鼓動だけを聞いていた。
空は、酷く高く遠く・・・あそこに泳ぎ着くには、どれだけの時間がかかるんだろうと、そんな皮算用をしたなら。
君がかすれた声で笑い声を立てて、馬鹿だなあと。
形あるものは、みんな捨てられたらスクラップだけど。
俺はお前捨てないよ。
だから勝手にゴミ箱行くのナシ。
命まで飲み込まれそうな暗い闇。
もがくのを辞めるというのなら許さないと。穏やかなままで君が告げた。それが凪いでいたあの空間に響いた唯一つの音。
ああ。分かったと唇は勝手に動いて約束をする。
あきらめない。
意志さえ殺されるあの戦場で。
ただ、揺るがない決意として。ざらついて濁ったこの心で、懸命に夢を見た。
軋んで崩れる感情を必死で繕いながら、焼け爛れた息を吐き出すように繰り返して誓う。
あきらめない。
決してあきらめないと。
君の冷たい手のひらが、ぽん、と心臓をたたく。
そうだ、とかすれた声が言った。
ゴミだって思ったものからゴミになるのさ。どんなくだらないもんだって、宝物だと思ってりゃ、それはずーっと宝だ。
だから、行こうぜと君が言う。
このままここにいるなんて、自分からゴミ箱に足を突っ込んでるようなもんじゃないかと。
そんなつまらない言葉に、はじけるように、二人で笑った。
笑って、笑って、叫んで、吼えた。
くだらなくてちっぽけなズタボロの命でも。
互いにとっては宝物で、互いにとっては唯一つの光なんだ。
だからこれは、悲鳴じゃない嘆きじゃない祈りでもない。
叫ぶのは、最後だからじゃない、これから始まるからだ。
廃棄寸前のさび付いた体を軋ませて、感情という名の船にのって、進むんだ。たとえ、目指す大地がどれだけ遠くとも。
あきらめない。
繰り返し空に囁く。
これは、ただの。
戦う覚悟などなかった。
人を殺すなんて冗談じゃないと。
ましてや人に殺されかけるなど。
死にたくないし、殺したくもない。
恐怖に足だってすくんだ。
勇敢に立ち向かえ、なんて台詞は、戦場にいないから吐けるのだ。
殺せ、と人が叫ぶ。
殺せ、と空気が。大地が。空が吼えた。
すくんだ心にふたをして、人形みたいに心をつぶして。
ただ、ただ、目の前のものだけを。
ひたすらに切り捨てる、だだそれだけの地獄。
そして・・・その地獄にも、君はいた。
それがすべて。
それが、奇跡。
ズタボロになって転がった、布切れみたいな命が二つ。互いの胸に手を置いて、互いの鼓動だけを聞いていた。
空は、酷く高く遠く・・・あそこに泳ぎ着くには、どれだけの時間がかかるんだろうと、そんな皮算用をしたなら。
君がかすれた声で笑い声を立てて、馬鹿だなあと。
形あるものは、みんな捨てられたらスクラップだけど。
俺はお前捨てないよ。
だから勝手にゴミ箱行くのナシ。
命まで飲み込まれそうな暗い闇。
もがくのを辞めるというのなら許さないと。穏やかなままで君が告げた。それが凪いでいたあの空間に響いた唯一つの音。
ああ。分かったと唇は勝手に動いて約束をする。
あきらめない。
意志さえ殺されるあの戦場で。
ただ、揺るがない決意として。ざらついて濁ったこの心で、懸命に夢を見た。
軋んで崩れる感情を必死で繕いながら、焼け爛れた息を吐き出すように繰り返して誓う。
あきらめない。
決してあきらめないと。
君の冷たい手のひらが、ぽん、と心臓をたたく。
そうだ、とかすれた声が言った。
ゴミだって思ったものからゴミになるのさ。どんなくだらないもんだって、宝物だと思ってりゃ、それはずーっと宝だ。
だから、行こうぜと君が言う。
このままここにいるなんて、自分からゴミ箱に足を突っ込んでるようなもんじゃないかと。
そんなつまらない言葉に、はじけるように、二人で笑った。
笑って、笑って、叫んで、吼えた。
くだらなくてちっぽけなズタボロの命でも。
互いにとっては宝物で、互いにとっては唯一つの光なんだ。
だからこれは、悲鳴じゃない嘆きじゃない祈りでもない。
叫ぶのは、最後だからじゃない、これから始まるからだ。
廃棄寸前のさび付いた体を軋ませて、感情という名の船にのって、進むんだ。たとえ、目指す大地がどれだけ遠くとも。
あきらめない。
繰り返し空に囁く。
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