暁を待つ庭/短編保管庫
別ブログにて書き散らした短編まとめ。
激しく気まぐれ更新。
落葉
初出:2005/12/14
秋の終わりとさようなら。
秋の終わりとさようなら。
そう、これで。
最後にしよう。
青く高く、どこまでも突き抜けるかと思えるほどの空は美しくて雲ひとつない。涼やかな小春日和、ともに歩く人もなく。
電車ががたがたと通り過ぎたあとの静寂を突っ切って、神社へ続く階段を上る。欠けの目だつ石段は、昨日までの雨で湿っている。
神様、神様。
大事な人が消えました。
この人のためなら死んでもいいと思っていた、大事な人が。
私を残して空へ行きました。
神様、神様。
生き返らせろなんて馬鹿なことは言わないけれど。
愚痴らせてください。
こんな馬鹿なことがあってたまるかコンチクショウって、罵らせてください。
ざざざあっと風が吹き荒れて髪も心もぐちゃぐちゃで、目に砂が飛び込んできた痛さでようやく涙がこぼれた。馬鹿みたい、馬鹿みたい。あんなに悲しくて泣けなくて、こんな、ちっぽけな砂のせいであっさりと涙が出るなんて。
神様、神様。
意地っ張りなのは性格なんです。それでもきっかけがなければ涙さえもこぼれない、生来の気質が辛いんです。
あの人が愛した町並みは、やっぱりどこが素敵なんだかさっぱりわからなくって。
あの人が好んだブラックコーヒーも、私にはただの苦い飲み物でしかなくって。
あの人が夢見た輸入物の高級車は、やっぱりどこか好きになれないままで。
あの人が好きといってくれた私も、何のとりえもない冷たい人間のままで。
もうあの人が好きだったものなんか全部なくなってしまえばいいのに。
石段を登りきると、庭園を彩どる銀杏並木。
ペンキを塗ったみたいに鮮やかな黄色が、青い空を舞う。
嘘みたいな世界。あの人がいなければ何もかも嘘みたい。それなのに手を伸ばせばこんなにも簡単に、触れる。
神様、神様。
今から泣きます。
でもこれが最後。
あの人のために流す涙はこれが最後にしよう。
最後にしよう。
青く高く、どこまでも突き抜けるかと思えるほどの空は美しくて雲ひとつない。涼やかな小春日和、ともに歩く人もなく。
電車ががたがたと通り過ぎたあとの静寂を突っ切って、神社へ続く階段を上る。欠けの目だつ石段は、昨日までの雨で湿っている。
神様、神様。
大事な人が消えました。
この人のためなら死んでもいいと思っていた、大事な人が。
私を残して空へ行きました。
神様、神様。
生き返らせろなんて馬鹿なことは言わないけれど。
愚痴らせてください。
こんな馬鹿なことがあってたまるかコンチクショウって、罵らせてください。
ざざざあっと風が吹き荒れて髪も心もぐちゃぐちゃで、目に砂が飛び込んできた痛さでようやく涙がこぼれた。馬鹿みたい、馬鹿みたい。あんなに悲しくて泣けなくて、こんな、ちっぽけな砂のせいであっさりと涙が出るなんて。
神様、神様。
意地っ張りなのは性格なんです。それでもきっかけがなければ涙さえもこぼれない、生来の気質が辛いんです。
あの人が愛した町並みは、やっぱりどこが素敵なんだかさっぱりわからなくって。
あの人が好んだブラックコーヒーも、私にはただの苦い飲み物でしかなくって。
あの人が夢見た輸入物の高級車は、やっぱりどこか好きになれないままで。
あの人が好きといってくれた私も、何のとりえもない冷たい人間のままで。
もうあの人が好きだったものなんか全部なくなってしまえばいいのに。
石段を登りきると、庭園を彩どる銀杏並木。
ペンキを塗ったみたいに鮮やかな黄色が、青い空を舞う。
嘘みたいな世界。あの人がいなければ何もかも嘘みたい。それなのに手を伸ばせばこんなにも簡単に、触れる。
神様、神様。
今から泣きます。
でもこれが最後。
あの人のために流す涙はこれが最後にしよう。
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