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風に祈る

初出:2007/8/02
戦場にふく風。
風が止まった世界ほど、息苦しいものはない。男はしばし静止し、乾いた地面を見つめたまま息をとめた。
吐く。
どうもそれだけの動作が、酷く重い。
よく、分からなくなってきた。鉛のような手足をぶら下げて、今、崩れたいのか、歩きたいのか。
感情が飽和している。考えても考えてもまとまらない。もやのかかった心で、それでも懸命に息を吸うことに集中する。そうでもしなければ、魂がどこかへ飛ばされそうだ。
何が起きたか、なんていうのはこの際どうでもいいこと。
どうして起きたか、なんて愚問は論外。
ただ、嵐のような一夜が過ぎ去ったあとに、どうしようもなく空っぽなこの大地に、生きていた。
こういう気持ちをなんといっただろう。確かに覚えがあるはずなのに思い出せない。繰り返し、繰り返し、息を吸う。どれだけ呼吸をしても、安堵できない。

悲鳴がまだ耳にこだましているような気がして
覚めぬ夢に追われている気がして
泣いていたのは誰だったか思い出せない
大切な近しい人間だったはずなのに
あの時何をしていたんだろう
そう、ただひたすら、


殺して殺して殺して感情を、表情を。
湧き出る想いを叩き潰して。
叫びたい言葉を切り捨てて。
ただ、空っぽになって響かせていた世界の終わり、世界の叫び、反響してぐわんと体を鳴らして内側からはじけそうになりながら、そうでもしなければ。
叫んでしまいそうで、叫んでしまったら、狂いそうで。
そうやって殺し続けた感情は、まだ、動けない。
崩壊がやってきたのだというのなら破滅がやってきたというのなら、なぜまだこうして生きているのか。
わからない、何が、自分を生かしたのか。
分からないけれど・・・。


乾いた砂塵を巻き上げて、凪いでいた世界に動を呼ぶ。
ああ、そう、これは。
慟哭、というのかもしれない。


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