暁を待つ庭/短編保管庫
別ブログにて書き散らした短編まとめ。
激しく気まぐれ更新。
ジョーカー
初出:2005/10/06
誰もがどこかのストレンジャー。
誰もがどこかのストレンジャー。
「世界が終わった」
最果ての園で『ジョーカー』は言う。
「世界が終わった」
そうして静かに、砂時計を回す。
「終わってないわ」
頬杖を突いて『ストレンジャー』が言う。
「だって、私は消えていないし、あなたも存在している。世界は、終わったりしない」
「世界は毎日終わる」
『ジョーカー』は、全身の黒を翻して、答えた。
「世界は毎日終わる。そして、毎日生まれる」
真っ白な世界で、その黒だけが色。
最果てという空間で、ただ『ジョーカー』だけが、存在。
「でも、世界は続いているわ」
『ストレンジャー』が問う。
「昨日と今日はつながっているし、今日と明日だってつながっているはずよ」
最果てに迷い込んだ『ストレンジャー』は、時折この空間にやってきては消えていく、いわば通りすがり。
『ジョーカー』は静かに答える。
「連続ではない。日々は進化だ」
真っ白な真っ白な世界。
あるのは、『ジョーカー』の存在と。
巨大な砂時計だけ。
周りに溶け込んむほど白い砂が、さらさらと零れ落ちている。それをひっくり返すことだけが、『ジョーカー』の仕事。
「つながるのではない。重なっていく」
淡々と答える『ジョーカー』に、『ストレンジャー』は眉を寄せた。
分かるようで、分からない。理解できるようで、理解できない。
「あなたは、どうしてそんなことを知っているの?」
分からないと叫ぶ代わりに、『ストレンジャー』は問う。
「ジョーカーって、何者なの?」
最果てに、沈黙が舞い降りた。
『ジョーカー』は笑う。
それは小さな微笑。
「異質な者」
小さな声で。
切なく答える。
「ババ抜きでペアになれない。けれどもゲームにはなくてはならない。二枚あるのに片方しか使われない。片方は除外されたまま」
『ジョーカー』は、白い白い世界に、ただ一人黒い。
「知りすぎたから、除外された」
何もないはずのこの世界に、ただ一人存在している。
「ジョーカーは全てを知っている。だから、ここにしかいられない」
最果てには何もない。
だから、何もかもを知っている存在を受け入れられる。
他ではだめだ。
「ジョーカーは、知っているから知らないフリをする。そのためのピエロだ」
けれども。
けれどもきっと、本当は。
「忘れたいと、いつでも願っている」
そして。
帰りたい、と。
『ストレンジャー』が最果てから消えていく。
何かを言おうとしても声にならないまま。
『ジョーカー』は『ストレンジャー』の帰る場所を、いつだって羨望している。
帰りたい。
帰りたい、いつかきっと。
最果ての何もない空間に。
ただそれだけが『ジョーカー』の望み。
最果ての園で『ジョーカー』は言う。
「世界が終わった」
そうして静かに、砂時計を回す。
「終わってないわ」
頬杖を突いて『ストレンジャー』が言う。
「だって、私は消えていないし、あなたも存在している。世界は、終わったりしない」
「世界は毎日終わる」
『ジョーカー』は、全身の黒を翻して、答えた。
「世界は毎日終わる。そして、毎日生まれる」
真っ白な世界で、その黒だけが色。
最果てという空間で、ただ『ジョーカー』だけが、存在。
「でも、世界は続いているわ」
『ストレンジャー』が問う。
「昨日と今日はつながっているし、今日と明日だってつながっているはずよ」
最果てに迷い込んだ『ストレンジャー』は、時折この空間にやってきては消えていく、いわば通りすがり。
『ジョーカー』は静かに答える。
「連続ではない。日々は進化だ」
真っ白な真っ白な世界。
あるのは、『ジョーカー』の存在と。
巨大な砂時計だけ。
周りに溶け込んむほど白い砂が、さらさらと零れ落ちている。それをひっくり返すことだけが、『ジョーカー』の仕事。
「つながるのではない。重なっていく」
淡々と答える『ジョーカー』に、『ストレンジャー』は眉を寄せた。
分かるようで、分からない。理解できるようで、理解できない。
「あなたは、どうしてそんなことを知っているの?」
分からないと叫ぶ代わりに、『ストレンジャー』は問う。
「ジョーカーって、何者なの?」
最果てに、沈黙が舞い降りた。
『ジョーカー』は笑う。
それは小さな微笑。
「異質な者」
小さな声で。
切なく答える。
「ババ抜きでペアになれない。けれどもゲームにはなくてはならない。二枚あるのに片方しか使われない。片方は除外されたまま」
『ジョーカー』は、白い白い世界に、ただ一人黒い。
「知りすぎたから、除外された」
何もないはずのこの世界に、ただ一人存在している。
「ジョーカーは全てを知っている。だから、ここにしかいられない」
最果てには何もない。
だから、何もかもを知っている存在を受け入れられる。
他ではだめだ。
「ジョーカーは、知っているから知らないフリをする。そのためのピエロだ」
けれども。
けれどもきっと、本当は。
「忘れたいと、いつでも願っている」
そして。
帰りたい、と。
『ストレンジャー』が最果てから消えていく。
何かを言おうとしても声にならないまま。
『ジョーカー』は『ストレンジャー』の帰る場所を、いつだって羨望している。
帰りたい。
帰りたい、いつかきっと。
最果ての何もない空間に。
ただそれだけが『ジョーカー』の望み。
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