暁を待つ庭/短編保管庫
別ブログにて書き散らした短編まとめ。
激しく気まぐれ更新。
MAX - My only lucky Star
初出:2007/2/25
当初は絵本みたいなのを書こうとしていた気がする。
マックスは戦闘機だ。
マックスは、じいちゃんが一番愛した戦闘機だ。
ずっと昔、世界に戦争があったころ、マックスはじいちゃんの相棒だった。白黒の写真で見るじいちゃんは、やたらと凛々しくて自信満々な笑顔で、マックスに寄りかかって煙草をふかしている。嫌になるくらいかっこよくって、だから、じいちゃんは僕の憧れなのだ。
じいちゃんは空軍のパイロットで、マックスでいくつもの国の上空を飛び回ったって言う。いつもゲージをMAXにしてものすごいスピードを出してたから、マックスはマックスって言う名前になったんだって。
マッ クスはラッキースターなんだってじいちゃんは言う。他の仲間が皆助からなかった戦場でだって、マックスはじいちゃんを助けてくれた。どんなに銃弾を受け たって、爆発しないでちゃんと陸地に落ちたって。だからじいちゃんは、どんなにマックスが大破したって生き残ったし、どれほどぼろぼろの状態だって、絶対 にマックスと一緒に帰ってきて、修理したって。
戦争が終わるまで、ずっと同じ戦闘機に乗り続けたパイロットは珍しいんだぞって、じいちゃんはよく笑ってた。マックスは相棒で、命の恩人で、大切な恋人だったって。昔は、ばあちゃんが嫉妬するくらいだったんだぞ、って。
戦争が終わったとき、ちょうど大破した状態だったマックスは、そのままじいちゃんの手に残った。じいちゃんは少しずつこつこつ修理して、もう飛べないようにエンジンは抜いてしまったけれど、それでも外見だけは元の通りにちゃんと戻したんだって。
それで、うちのガレージにはマックスがいて、それが当たり前だった。だからじいちゃんがマックスを処分するって言ったときは、僕は本当にびっくりして、びっくりしすぎて涙が出てしまったくらいなんだ。
なんで、どうしてじいちゃん。マックスは大事な相棒なんでしょうって聞いたら、じいちゃんもくしゃくしゃに泣きそうな顔をしてた。そうだよ、ってじいちゃんはうなずいた。何度も。
そうだよ、マックスは大事な、大事な相棒だ。地獄も天国も一緒に見てきた。だけどこればかりはどうしようもないんだ。マックスには先に行ってもらうよ、そして、俺が行くときは迎えに来てもらうさ・・・。
どうしようもないんだって。政府って偉いところがそう決めたんだって。本当ならもうとっくに、さよならをしなきゃいけなかったんだって。だからマックスは、じいちゃんの大事なマックスは、役人とか言う人に持っていかれてしまうんだって。
じいちゃんは涙を目にためながら、ずっと綺麗に磨き続けたマックスの翼に、キスをした。
バイバイ、次の人生は結婚しような。
僕は、息を詰めて。
マックスとならばあちゃんも許してくれるかな、って、思った。バイバイ、マックス。じいちゃんのこと、次もよろしくね。
当初は絵本みたいなのを書こうとしていた気がする。
マックスは戦闘機だ。
マックスは、じいちゃんが一番愛した戦闘機だ。
ずっと昔、世界に戦争があったころ、マックスはじいちゃんの相棒だった。白黒の写真で見るじいちゃんは、やたらと凛々しくて自信満々な笑顔で、マックスに寄りかかって煙草をふかしている。嫌になるくらいかっこよくって、だから、じいちゃんは僕の憧れなのだ。
じいちゃんは空軍のパイロットで、マックスでいくつもの国の上空を飛び回ったって言う。いつもゲージをMAXにしてものすごいスピードを出してたから、マックスはマックスって言う名前になったんだって。
マッ クスはラッキースターなんだってじいちゃんは言う。他の仲間が皆助からなかった戦場でだって、マックスはじいちゃんを助けてくれた。どんなに銃弾を受け たって、爆発しないでちゃんと陸地に落ちたって。だからじいちゃんは、どんなにマックスが大破したって生き残ったし、どれほどぼろぼろの状態だって、絶対 にマックスと一緒に帰ってきて、修理したって。
戦争が終わるまで、ずっと同じ戦闘機に乗り続けたパイロットは珍しいんだぞって、じいちゃんはよく笑ってた。マックスは相棒で、命の恩人で、大切な恋人だったって。昔は、ばあちゃんが嫉妬するくらいだったんだぞ、って。
戦争が終わったとき、ちょうど大破した状態だったマックスは、そのままじいちゃんの手に残った。じいちゃんは少しずつこつこつ修理して、もう飛べないようにエンジンは抜いてしまったけれど、それでも外見だけは元の通りにちゃんと戻したんだって。
それで、うちのガレージにはマックスがいて、それが当たり前だった。だからじいちゃんがマックスを処分するって言ったときは、僕は本当にびっくりして、びっくりしすぎて涙が出てしまったくらいなんだ。
なんで、どうしてじいちゃん。マックスは大事な相棒なんでしょうって聞いたら、じいちゃんもくしゃくしゃに泣きそうな顔をしてた。そうだよ、ってじいちゃんはうなずいた。何度も。
そうだよ、マックスは大事な、大事な相棒だ。地獄も天国も一緒に見てきた。だけどこればかりはどうしようもないんだ。マックスには先に行ってもらうよ、そして、俺が行くときは迎えに来てもらうさ・・・。
どうしようもないんだって。政府って偉いところがそう決めたんだって。本当ならもうとっくに、さよならをしなきゃいけなかったんだって。だからマックスは、じいちゃんの大事なマックスは、役人とか言う人に持っていかれてしまうんだって。
じいちゃんは涙を目にためながら、ずっと綺麗に磨き続けたマックスの翼に、キスをした。
バイバイ、次の人生は結婚しような。
僕は、息を詰めて。
マックスとならばあちゃんも許してくれるかな、って、思った。バイバイ、マックス。じいちゃんのこと、次もよろしくね。
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